抄録
展開し続ける認知行動療法に統合はあるのか?パニック症に対する認知行動療法のメタアナリシスから統合の意義を問う
発表者 原井宏明
所属 原井クリニック ㈱原井コンサルティング&トレーニング
2024/03/17 松沢病院大会議室
つぎつぎ新しい心理療法が生まれる状況は宗教に似ている。たとえば仏教は一人の創始者から生まれたが、現在では十三宗五十六派あるとされる。これは行動療法・認知行動療法(CBT)も同じである。1970年代、一部の実験心理学者が日本で行動療法を始めたとき、彼らは心理療法業界のマイノリティーであり、主流派からは蔑まれ続けた。
今では隔世の感がある。関連学会や治療法の数も増えた。疾患・問題ごとに治療パッケージを作れるのはCBTの生産性が高いからだろうが、CRA, CRAFT, DBT, ACT, CBT-I, TF-CBT, MBCT, CBITと言われて誰がついていけるだろうか?最近は Radically Open Dialectical Behavior Therapy (RO DBT)というものもある。普通は「ついていけない」と答えるだろうし、演者もそうだ。
行動療法に骨の髄まで漬かっている演者は先のリストの意味を知っており、ワークショップ講師になったことすらある。自分が普及する側にいながら、それでも「ついていけません」と答えるような展開を続けるCBTに統合はあるのだろうか?
発表スライド JAMI2024_harai
原井宏明. (2002). 慢性の経過をとる患者に対する精神医学的マネージメント,上島国利,中根允文 (編), パニック障害治療のストラテジー (pp154–164) 先端医学社2002