強迫症専門クリニックにおける診療実績―原井クリニック1年間の診療実績2021年度―日本認知・行動療法学会第48回大会2022年9月

強迫症専門クリニックにおける診療実績 ―原井クリニック1年間の診療実績2021年度―

〇原井宏明1,2) 松浦文香1,2)

1)原井クリニック、2)(株)原井コンサルティング&トレーニング

目的

強迫症(obsessive compulsive disorder,以下OCD)は強迫観念/儀式が本人の意図と関わりなく強迫的に生じるものである。子どもから老人まで幅広く見られ,症状は一過性ではなく長期にわたることが多い。観念・儀式の内容は様々であるが,同じ思考や行動を繰り返し,生活習慣の柔軟性が損なわれる点で共通している。これまで難治性の精神疾患として扱われてきたが,薬物療法および心理療法の発展とともに現在では治療可能な精神疾患として認知されている。

原井クリニック(以下当院)は2019年1月にOCD専門クリニックとして開院した。薬物療法(ほとんどがSSRI単剤)に加え,曝露反応妨害法(ERP)を中心とした行動療法を行っている。さらに当院では短期間での治療を希望する者に対して,グループで3日間の持続的なERPを行う3日間集団集中治療(3 Days Intensive treatment:3DI)を提供している。OCDに対する治療として短期集団集中治療は有効なもののひとつとして認められている(Ben-Arush, Wexler, and Zohar 2008)。当院で行ったものの症例報告がある(柴田 et al. 2019)。

本研究は2019,2020年の報告に引き続き(金田, 四方, 原井 2020、原井,松浦 2021)、当院の2021年度の外来患者情報について調査報告を行うものである。地域や診療内容から、OCDの外来治療について検討することを目的とする。

対象と方法

2021年4月1日から2022年3月31日までの間に当院を受診した患者468名(男性215名,女性253名)。

この期間の診療情報から年齢や性別、居住地域,主病名,治療内容を調べた。

倫理的配慮

当院のプライバシーポリシーとして,医療の質・パフォーマンスの改善のための基礎資料として診療情報を用いること,その際には個人を識別あるいは特定できない状態に加工した状態で用いることをHP上にて明示し、受診時に同意を得ている。

結果

患者の平均年齢は31.6±13.8歳、9から75歳であった。468名のうち主診断がOCDである者は336名(71.8%)であった。患者の年齢ヒストグラムを図1に示す。

図1 年齢別患者数

初診(最終受診から6か月以上空いた再初診を除く)の患者は214名、そのうち主診断がOCDである者は137名(64.0%)であった。再初診は36名であり、そのうち主診断がOCDであるものは27名であった(75.0%)。

OCD以外の不安症、OCD関連症について調べた。一人の患者が複数の診断名をもっている場合がある。

  2019 2020 2021
醜形恐怖症 1 7 13
抜毛症 0 10 1
社交不安症 14 8 14
パニック症 10 3 3
注意欠如多動症 20 21 26

醜形恐怖症の診断が増加していることがわかる。他に数例、血液外傷恐怖の治療のために受診する例があった。

468名の住所地方別を表1に示す。

全体 初診・再初診
東北以北 12 4
関東 402 221
中部 42 21
近畿以南 12 4

 

3DIに参加した者は49名であった。3DIに参加した患者の年齢ヒストグラムを図2に示す。3DIには醜形恐怖症の患者も参加している。

家族相談が21例、セカンドオピニオン受診が22例あった。心理士による個人カウンセリングは19例あった。

OCDおよび関連症以外の疾患については、パニック症に対しては内部感覚エクスポージャーのセッションを行っている。2021年度では3例に対して行った。血液外傷恐怖に対しては応用緊張のトレーニングと採血を行っている。2019年から5例に行った。

考察

本調査はOCD専門クリニックにおける診療実績について検討することを目的としていた。2019,2020年度の報告と比較すると次のような特徴がある。

  1. 初診患者数404→231→250名
    関東地方以外からの患者数は84→26→29名となり、昨年度とほぼ同じである。
  2. 3日間集団集中治療参加者数72→47→49名
    2021年度の開催回数は11回であった。
  3. OCDの比率は大きな変化はない。醜形恐怖症の増加と抜毛症の減少が見られる。

3DIには患者の中でも重症のものが参加する傾向があった。今までと同様に10から29歳は男性が、それ以降は女性が参加することが多かった。70代の女性が最高齢だった。

今後、3DIの前後での重症度評価をまとめ、治療成績に関しても今までのものとの比較を行っていく予定である。

引用文献

Ben-Arush, Oded, Jessica B. Wexler, and Joseph Zohar. 2008. “Intensive Outpatient Treatment for Obsessive-Compulsive Spectrum Disorders.” Isr J Psychiatry Relat Sci. 45(3):193–200.

柴田華[石井], 金田翔太郎, 岡嶋美代, and 原井宏明. 2019. “慢性化した強迫症患者に対する3日間の集団集中治療プログラム 不誠実恐怖 人には言えないラブストーリー.” 日本認知・行動療法学会大会プログラム・抄録集 45回:259–60.

金田翔太郎, 四方陽裕, and 原井宏明. 2020. “強迫症に対するERP専門クリニックにおける外来患者調査 原井クリニック1年間の診療実績.” 日本認知・行動療法学会大会プログラム・抄録集 46回:185–86.

原井宏明, 松浦文香. 強迫症専門クリニックにおける診療実績 原井クリニック1年間の診療実績. 日本認知・行動療法学会大会プログラム・抄録集. 2021;47回:314-315.

ポスター

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA