2020年3月1日に予定していた日本動機づけ面接協会第8回大会について

ティム・ガデン先生を招いてJAMI第8回大会を行う予定でした

2020年3月1日に日本動機づけ面接協会(JAMI)第8回大会を行う予定でした。京都大学精神科の挾間雅章先生には会長として魅力的なプログラムを作っていただきました。日本各地でMIの普及活動を行っている方を集めたシンポジウムと劇団衛星の代表、蓮行先生によるワークショップ「演出家の視点を動機づけ面接に活かす-演劇的手法によるコミュニケーションデザイン-」など高校時代は演劇部員だった私としてもぜひ聞きたい内容でした。さらにカナダ最大の依存症・精神医療センターである嗜癖精神保健センター(CAMH)においてMIの普及に努めているソーシャルワーカー、ティム・ガデン先生にワークショップと基調講演をしていただく予定でした。彼のテーマは、実装研究のための統合フレームワーク(Consolidated Framework for Implementation Research, CFIR)でした。

結果的には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延防止のために大会の中止を余儀なくされました。2月末からこの原稿を書いている3月末の時点まで全国規模の学会行事はどこも中止か延期になっています。JAMIの大会を楽しみにしてくださっていた方、翻訳など準備を手伝ってくださった方には代表理事としてとても申し訳ないと思っております。一方、これをお読みになっている方の中にはご自身が企画されていた行事をキャンセルせざるを得なくなり、「お互い様です」と同情していただける方もおられるでしょう。日本全体で、いいえこの原稿を書いている3月末の時点では世界全体で物理的に人とつながることを避けることが当たり前になりました。1か月前のことを考えるととても奇妙な感じがしますが、それは皆さんも同じでしょう。これを書いている時点では47都道府県中、10の県で感染者ゼロです。しかし、そうした地域でも咳する人を恐れ、人が密集する場所を回避する人が普通でしょう。不安の普及はウイルス感染よりも早く、回避は人を連帯させたかのようです。

実装研究

学会は当日だけのイベントではありません。企画を1年以上前に立て、発表者を募り、スタッフの準備を整え、資料を翻訳するなど1年はかかる長いプロセスです。ですから大会自体がキャンセルされても、それまでのプロセスから目新しいことを数多く学ぶことになります。しかし、JAMIの大会も8回目、MIに関して海外から特別講師を呼ぶのも2004年に世界行動療法認知療法会議(WCBCT)神戸大会のときにスーザン・バターワース博士とウルフェフト・ハプケ博士を呼んだ時までさかのぼると10回をはるかに超えています。毎回、特別講師から目新しい情報をもらうことを楽しみにしておられた方が多いはずですが、私個人はそろそろネタが尽きた感じがしていました。正直なところ、今回の大会ではMIについて新しいことは出てこないだろうと思っていたのです。ティムが書いたアカデミックな論文はごくわずかであることもそう思っていた理由の一つでした。

特別講師にはいろいろな種類があります。大雑把に言えば有名人とそうでない人。有名人の代表例が昨年のカレン・インゲルソル博士、一昨年のテリー・モイヤーズ博士のように論文や書籍の形で世界に発信している人でしょう。一方、ティムは長年CAMHのスタッフを務め、職場内にMIを確実に普及させることを実務として行ってきました。外部に対しては目立たない人です。しかし、そんなティムが今回、私たちがあまり知らなかったことを教えてくれました。“Implementation Research”(実装研究)は初耳でした。

今この時期、感染症予防のための手洗いの重要性を知らない人は誰もいないでしょう。実際に大半の人が外出から帰ったときに手を丁寧に洗っておられるでしょう。しかし、1年前はどうだったでしょうか?1年後はどうなるでしょうか?重要かつ大切で良く知られている方法があるとしても、それが人の毎日の実際の行動の変化につながらなければ何も意味がありません。実際に行ってもらい、期待された効果を出し、そして行動の変化が継続するようにするためにはどうしたらいいのでしょうか?そのような研究の疑問をもち、答えようとするのが“Implementation Research”であり、日本語では“普及と実装科学”と呼ばれていることを私は初めて知ったのでした。調べると、日本にも「普及と実装科学研究会」という学会がありますが、2018年が第1回の大会でした。それまでこの概念を普及する団体がなかったわけです。

不安の普及は早く、不安対象を避けることもすぐに周りが模倣します。しかし、何か前向きに新しいことに取り組み、日々の行動を変えていくことはもっと何年もかけたプロセスが必要です。そんな日に当たらない地道な努力の大切さをティムは自分の体験の中から伝えてくれようとしたのでした。

MIの普及と実装のこれから

今回のコロナウイルス感染症のことでもう一つ気づかされたことがあります。昨年、カレンがeHealth, mHealthのようなインターネットやスマホを使った介入法を紹介してくれました。実はこの技術は今回のような事態のときにこそ使われるべき方法なのでした。学会もインターネットやスマホで行うことができます。さすがに今回の学会ではとても間に合いませんでしたが、日本に来てくれたティムが行ってくれた講演(いわゆる無観客講演)を録画しました。JAMIの会員の皆様に見ていただけるように準備しています。

次回第9回大会の予定

2021年春ごろに東京での開催を予定しています。詳細を決めるのはまだ先になりますが、次回の会長を京都大学精神科の挾間雅章先生に再びお願いする予定です。ぜひご参加ください。

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