児童青年に対する認知行動療法の理論と実践:エビデンスに基づく臨床実践の方法論、医療場面における実践の立場から 2006年11月日本心理学会

石川信一・佐藤 寛・坂野雄二・富家直明・佐藤正二・原井宏明 2006 児童青年に対する認知行動療法の理論と実践:エビデンスに基づく臨床実践の方法論 日本心理学会第70回ワークショップ 日本心理学会第70回大会発表論文集,W39頁

企画の趣旨
認知行動療法は児童青年のさまざまな問題に対して有効性が実証されている心理療法である。一昨年度のワークショップでは国内外の児童青年に対する認知行動療法の研究・臨床活動に関する動向が報告され,昨年度は児童青年の臨床実践における基礎的な研究成果の応用可能性について活発な議論がなされた。
RCTなどのデザインを用いた効果研究によって,特定の問題に対してどのような介入パッケージが有効性を持つかといったエビデンスはある程度明確にされつつある。加えて,さまざまな基礎的な研究の知見により,有効な介入方法への示唆も得られている。しかしながら,このような研究レベルにおいて示されたエビデンスを,具体的な日々の実践レベルにどのように取り入れていけばよいかという点については,重大な課題として残されたままである。このような治療・介入の「transportability」の問題については,実験研究やアナログ研究において論点とはなりにくいが,臨床実践や実践研究においては避けることのできない問題である。
そこで,本年度のワークショップでは,児童青年に対する認知行動療法のエビデンスを教育や医療のフィールドにおける実践にいかにして取り入れていくか,という点について発表を行い,研究レベルで明らかにされたエビデンスを実践レベルに適用するための方法論について議論することを目的とする。
ワークショップの構成
まず,効果研究から得られたエビデンスを実践の現場に適用することの意義や方法論について概説し,本ワークショップの全体としての論点を明らかにする。その上で,教育場面における実践,学級を対象とした集団実践,医療場面における実践の立場から話題提供を行ってもらい,それぞれの実践現場において研究レベルのエビデンスを実践レベルに応用することの有用性や問題点について発表する。その後,指定討論者およびフロア全体を含めたディスカッションを通じて,論点となった話題に関する議論を深めていく。

話題提供者
① 石川信一 宮崎大学教育文化学部
全体の流れについて概説
研究レベルのエビデンスと実践レベルを統合する意義や方法論に関する概説を行い,本ワークショップ全体の構成について説明する。
② 富家直明 宮崎大学教育文化学部
教育場面における実践の立場から
教育現場におけるスクールカウンセラーの立場から,帰属療法を実践するに当たって,帰属理論の基礎研究の効用と限界について発表し,議論する。
③ 佐藤正二 宮崎大学教育文化学部
学級を対象とした集団アプローチの立場から
学級単位のSST実践が確立されていく過程において,エビデンスの集積と具体的な介入方法の開発がどのように展開されてきたかという点について発表を行う。個別SSTから学級単位,学校単位の集団SSTへの実践への適用面について焦点を当てる。
④ 原井宏明 菊池病院臨床研究部
医療場面における実践の立場から
認知行動療法の有効性が示されている精神医学的な問題を(1つか2つほど)取り上げ,認知行動療法に関する医学的なエビデンスを児童青年のクライエントを対象とした医療の実践に適用する上での効用と限界について議論を行う。

原井の発表スライド

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