2012/3/21 行動科学学会 第28回ウィンターカンファレンス2012 シンポジウム1「ヒトとその仲間の強迫性障害」 企画者:原井宏明

場所〒949-2113 新潟県妙高市杉野沢 1978 「ハイランドロッジ タケゲン」

シンポジウム1「ヒトとその仲間の強迫性障害」 企画者:原井宏明

統合失調症やうつ病にはPCP誘発モデルや学習性絶望感モデルなどの動物モデルがある。 一方,強迫性障害の動物モデルはあまり知られていない。実は,犬や猫でも強迫行為をしている。 このシンポジウムでは,強迫性障害の概念と診断に関する一般的な紹介,認知知行動モデルと治療, 実際の治療場面のデモビデオ提示を2人の臨床家が行う。 次に獣医が動物における強迫性障害の紹介をする。 最後に学習理論からみた強迫行為・常同行動についての実験的基礎を2人の研究者が解説する。

3DI:3日間集団集中行動療法プログラム
原井宏明 (なごやメンタルクリニック)

3DI:3日間集団集中行動療法プログラムとはエクスポージャーと儀式妨害(ERP)を数人から10人の患者グループを対象にして3日間で行うものである。2005年,遠隔地からの患者に対応するために開発した。2008年になごやメンタルクリニックで行うようになった。過去3年間,300人以上の患者がこのプログラムを受けている。この講演では3DIのあらましと治療成績を治療場面のビデオと音声を用いて解説する。
悪徳セールスマンを追い返すには?: 強迫性障害の認知理論
小堀 修 (千葉大学)

不安の認知理論によれば、起きてほしくないことが起こる確率を高く見積もり、実際の起こったときの恐ろしさを大きく評価すると、私たちの不安が高くなる。起きてほしくないことを未然に防ぐため、一生懸命に、様々な予防をしようとすると、高い不安が維持されてしまう。本発表では、(1)不安の認知理論を強迫性障害に応用して解説し、(2)治療において、話し合いや行動実験がどのように行われているのか具体例を提示する。
獣医からみた動物の強迫性障害(常同障害)
入交 眞巳 (北里大学)

大型犬にみられる前肢を舐め続ける行動、柴犬によくみられる尾を追い続ける行動、馬のさく癖行動などは、その症状、薬物に対する反応、および遺伝的要因が関与する3つの点から人の強迫性障害と類似した疾患なのではないかと考えられている。しかし、動物に「強迫観念」はないであろうと仮定し、英語ではOCDではなく、obsessionを抜いてcompulsive disorder(日本語訳では「常同障害」)と現在は表現されている。今回は動物の常同障害を映像でご紹介する。
付随的行動の意味:強化子がなくても維持される強迫行動の動物モデル
磯 博行 (兵庫医療大学)

1961年に、J.L.Falkがラットのオペラント実験中に偶然発見したスケジュール誘発多飲症(SIP)は、動機があいまいなまま強く持続して行動が生じることからアルコール依存症のモデルとして注目された。その後、噛み付きや敷き藁を噛むなど他の行動も間歇強化スケジュールの下で生じることが明らかとなり、このような行動は付随的行動と呼ばれた。これらを説明する理論をとりあげ、その動機付け的側面について考察する。

適応と不適応の境界線
吉野俊彦 (神戸親和女子大学)

行動分析学ではすべての生じているオペラント行動は何らかの強化を受けており,個人の行動レパートリーの中で適応的なものが選択的に強化されていると仮定する。一方で,適応的であるはずの確認行動が過剰となり,不適応感を主訴に来談されるクライエントが存在する。適応と不適応を分ける境界線は何か,そうした不適応行動を行動随伴性でどのように捉えることができるかを,徹底的行動主義の立場から症例を含めながら考えたい。

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